『大英帝国の大辞典作り』
いや辞典で探しても出てこない事典の方で
『大英帝国の大事典作り』
でも話にある事典は1つ辞典は2つだった(笑)
以下三つ(19世紀後半から20世紀初頭刊行)
ブリタニカ百科事典(Encyclopaedia Britanica)
オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)
イギリス国民伝記辞典(Dictionary of National Biography)
18世紀後半から19世紀後半にかけて、イギリス人はこの三つの大辞書、大事典を編纂した
世界をリードする気概にあふれた当時のイギリス社会は、なぜ・・
近代の知のインフラを整備した人々と歴史を検証する
・・というテーマなのだが、私の方は、
最後の第四章の「三つの辞書・事典の現状と将来」の方により興味があったかも・・
でも初めの第一章の
イギリス社会ではエリート的な知的活動の主要な担い手は男性のアマチュア学者たちだった、その担い手が交代する時期に百科事典が編纂されたという話や
フランスの百科全書派の哲学・政治上の大胆さとイギリスの産業精神とイギリス的教養という比較も面白い
西洋での百科事典
1.現存最古が古代ローマ大プリニウス(23‐79)の「自然誌』全37巻
:主題別に古代世界の地理・自然・歴史の知識を集大成
2.カシオドルス(6世紀)やイシドルス(7世紀)が古代の知識を中世に伝達
3.フルダ修道院長ラバヌス・マウルスの百科事典(9世紀)
4.ユーグ・ド・サン=ヴィクトルの「ディダスカリオン」(12世紀)本格的な百科事典の基礎・・12~13世紀はスコラ哲学の最盛期
5.16世紀 ベイコン:演繹法でなく帰納法という新しいプログラムに置き換える素材の蒐集の必要性、17世紀 ライプニッツの過去の最良物の抜粋と新たな最も優秀な専門家の観察の追加をまとめるプロジェクトの構想
6.18世紀という時代 ジャーナル(定期刊行物)広がる知的ネットワーク
その知的活動の成果を最も高い水準でまとめたのがフランスの啓蒙思想家の「百科全書」(ディドロやダランベール)個人編集でなく一段の研究社=寄稿者の集合的な努力によって創造された これはそれ以前のエフレイム・チェインバーズ 「サイクロピ―ディア」(1728 @ロンドン)を翻訳しようというものだったが計画修正された
イギリスとフランスの知的関係「サイクロピ―ディア」(イギリス)→「百科全書」(フランス)→「ブリタニカ」(イギリス)(この時代イギリスはあこがれの地)
ブリタニカ百科事典(Encyclopaedia Britanica) 1787年創刊 全32巻
経済的成功は編集主体がアメリカ(シカゴ大学)に移った20世紀
しかし1990年以降、突如変調
原因 マイクロソフト社のCDーROM版 百科事典「エンカルタ」の登場
しかし「紙の百科事典」に代わる最終的祖勝者は
「商品としての百科事典」ではない「Wikipedia」
うぃき=ウィキウィキウエブ:インターネット上で複数の人々が協調作業を行うことを可能にする支援システム
ぺでぃあ=百科事典のエンサイクロペディアの後ろ半分
Wikipediaの文章は絶えず民主主義的、ないしは市場主義的な評価・判定にさらされる
筆者と読者の直接対話
ブリタニカ百科事典 - Wikipedia
*Wikipediaによれば 全人類の英知を理論的に体系化する「知識の概要( Outline of Knowledge )」
2009年2月のインタビューで Britannica UK のイアン・グラントはこう語っている。
ウィキペディアは楽しいサイトで面白い記事が山ほどあります、しかしそのやり方はブリタニカではうまくいかないでしょう。世の中に情報を発信していく際、その取り組み方は非常に異なっている、ということを明確にするのが今の私の役目です。彼らは彫刻刀で、私たちはドリルです、そしてあなたたち読者は正しい道具を選ぶべきです。
いやぁさらに9年たって、この比喩はどうかな??
Encyclopedia Britannica | Britannica.com
オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)1928年
OED第二版の刊行1989年全20巻
CD-ROM版1992年
ネット公開(2000年 年額350ポンド=約6万円)
コンピューター・コーパスの活用
OEDオンラインOED 第三版編纂完了前から公開
オックスフォード英語辞典 - Wikipedia
*この本には2010年第三版40巻 刊行予定とあったが、Wikipediaには、たぶん発行されないだろうとある
イギリス国民伝記辞典(Dictionary of National Biography)1885年
国民の歴史を書くことと歴史学上の趨勢・・?
ナショナリズムの愚劣さを極限まで味わっていない国
第一版:奇妙にナショナリズムの色彩が薄い。 第二版:「自己族中心」主義を奉じて運営してきた「帝国」を脱植民地の趨勢の中で失ったイギリス・・帝国の解体に際し、「被支配民族が政治的に自立することができるまで十分に面倒を見てやった後、無様に利権に執着することなく帝国から撤退した」という歴史イメージ
2004年『オックスフォードDNB』全60巻 書籍版。インターネット版一斉公開
インターネット版の革新性:将来にわたって記述内容が更新、追加される 常時アップデート(年3回)、検索性
英国人名事典 - Wikipedia
Oxford Dictionary of National Biography
いま、このほかに
Ammon Shea 『そして、僕はOEDを読んだ』 田村幸誠訳(2010年)をパラパラとちょっとみている
nekoatama.hatenadiary.jp