昨日の講義2つ
1.世界の中の日本ー日本の花産業の現状と将来ー
by岐阜大学応用生物科学部福井博一教授(生産環境科学課程)
花き産業の方向の啓蒙で、面白かった
1998年を境に花きの産出額が急激に落ち込んだこと
2003年に 一旦急落が停止したが、2010年から再び減少した
1999年以降バラの総流通量は40%も減少した
しかし、ユリは景気低迷の影響をあまり受けていない。何故か?
車のディーラーはモノを売ろうとしていない
トヨタのはFun by driver
マツダはBe a driver
ホンダはThe Power of Dream
物販業でなくサービス業である(乗る楽しみ、ステータス)
海外旅行・国内旅行も景気の変動の影響を受けていない、むしろ増加している
人は心の豊かさを求め、日常から離れて一時の贅沢を求める
過去の取り組み「カジュアルフラワー・ホームユース作戦」は失敗である
バラ(切り花)とシクラメンはバブリーな花だった 心を豊かにする効果が低かった?
洋ランは確実なファンを獲得
花壇苗はバブル期と無関係
不景気を理由に逃げてはいけない
季節感を大切にする
花の魅力を適格に、積極的に伝える
花き販売はサービス業である
・・といった話だが、
アメリカでは、花き流通の国際化で生産が空洞化した
赤道直下の熱帯高地コロンビア、エクアドルの、年間を通じて一定価格で同じ商材を輸出する花工場からの切り花供給で、生花店が崩壊し、
アメリカの花卉生産業は花壇苗が主体となった
花はスーパーで売られ、売られている花はバラと菊とカーネーションが80%
チューリップとガーベラとユリを足すと全体の90%
アメリカの消費者はこれ以外の欲しい花がほぼ買えない
日本では多様な花を高く評価する
国際化に対応すると、輸入切り花は結構使えるが、
日本はアメリカの二の舞を演じないために、新たな品目品種の提供を!
花き業界は、「心の豊かさ」を提供し、感動を与える産業(=景気の影響を受けない)を目指す!
産地で開発された観賞花のオリジナル品種を海外に売り込む動き
宮崎県が主な産地のスイートピー:宮崎県オリジナルの「ロイヤルホワイト」
香川県は開発10年目となるカーネーションのオリジナル品種「ミニティアラ」
岐阜大学の福井博一教授(園芸学)は「国内市場が縮小する中で海外に販路を求めるのは一つの方策だが、継続できるかがカギとなる。海外は単なる日本ブランドではなく日本のトップブランドを求めており、生産体制強化やブランドの確立が欠かせない」と指摘
二つ目の講義は
2.バイオテクノロジーを用いた新しい花の開発
byサントリーグローバルイノベーションセンター(株)植物科学研究所長・田中良和氏(「青いバラ」開発チームを率いる)
品種改良(育種)の話で、青いバラはともかく青いキク、サントリーの花産業の歴史や育種の拠点まで面白かった
サントリーの歴史・・赤玉ポートワインから
「日本のワインぶどうの父」 わが国ブドウ育種の大恩人、川上善兵衛
Vitis vinfere
https://www.jataff.jp/senjin3/12.html
サントリーが花ビジネスに参入したのは
1986年 サフィニアは1989年発売開始
2002年7月にサントリーフラワーズを分社 花苗育種拠点は近江ナーサリー
品種改良(育種)の方法は交配育種、変異育種、組み換え育種の3つで、どの方法でも遺伝子が変化する
遺伝子組み換え(植物バイテク)を使う利点
- どの生物の遺伝子資源も利用できる
- 狙った形質のみを変更できる
必要な要素
- 有用遺伝子
- 形質転換系
- 発言調節
- 宿り主品種
- 生物多様性影響評価、社会の受け入れ
育種の方向性
- 頑健性(農薬を使わずに栽培できる、気候変動に耐性がある)
- 新しい技術 ゲノム編集
(最近話題のゲノム編集も技術的には遺伝子組み換えの手法を使う)
主要な切り花にない青~紫の品種の作出を目指す(共同研究)
農業生産資源研究所
九州大学に日本の重要な生物資源として、1000を超える朝顔の変異体が保存されている
江戸時代の図譜には黄色い朝顔がある
九州大学アサガオホームページ
ご紹介の参考文献(うちブルーバックスは読んでいた)
花はふしぎ―なぜ自然界に青いバラは存在しないのか? (ブルーバックス)
- 作者: 岩科司
- 出版社/メーカー: 講談社
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