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「世界の植物」99 ロングウッドガーデン

「世界の植物」99号の植物園めぐりは アメリカの ロングウッドガーデン


植物園めぐり

この植物園は,ペンシルペニア市の南西約 30キロのケネット・スクエアにある。デュポ ン大財閥の一員であったフランス系のピエー ル・サムエル・デュポンが,故郷のフランス をしのんで、広大な自然林を開拓して,噴水 のある大庭園を作り,そこに中世風の建物一 豪華なガラス張り温室を配し世界の園芸植 物を集めて公開したのが始まりであった。歴 史は浅く,著名な植物学者を生んだわけでもなく,りっぱな腊葉館があるというのでもないが,すばらしい植物園といえよう。

 

筆者が訪れたのは4月下旬だった。真っ赤な チューリップが咲き乱れる花壇で飾った門を 抜けると,一転して大噴水を抱いた広大な芝 生が目をうばう。その中央には野外大劇場も ある。花壇から花壇へと回遊式プロムナードが花の間を巡り,はるか彼方には,ガラス張 りの大温室が光り輝いている。そしてそれらを背後の大自然林がくっきりと浮き立たせて いる景観は,まさに大公園の風格である。

 

温室はさきの大ホール級から小さなものま で30室ばかり,中庭にはオオオニバスを中心 に,スイレンなどを配した温水池もある。シ ダ類,ラン類の室も整備され,カメリアを集 めた室には,日本のツパキの珍種まで,数多 く植えこまれていた。

 

花に見ほれ,香りに酔うほどに,やわらか なパイプオルガンの音にふと気づく。美しい お嬢さんの生演奏である。シンビジウム 面の温室内でふと目を閉じたら,いつしか王朝の大園遊会の主賓になった想いだった。

<文と写真·木島正夫 京都大学名誉教授> 植物園めぐり 🄫朝日新聞社 1977

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