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興味津津または深深なnekoatama’s blog

図書摘み読み(五大文字圏)(文明論比較人類史)

反省:最近、重要でない、余暇で楽しむことに時間とお金をとられている。
その結果、借りたものの読むことなく図書を返すことになり、

HPのコンテンツも放置ぎみ・・

改めよう!
この図書、『文字世界で読む文明論』プロローグくらいは精読しよう(-_-;)

熱中症警戒アラートは大阪では7月18日以降、24,25,29,30を除き、
連続発令中で、
暑すぎるという事はあるが、
冷房のある室内にいる限り、怠惰は言い訳(;^_^A

‥という事で、プロローグですが、

「四大文字世界」と「五大文字圏」という語がありました・・・

ラテン文字圏、ギリシア・キリル文字圏、アラビア文字圏、梵字圏、漢字圏--
五つの文字圏を比べてみると、世界の見方が変わる!


(p16の図)

 

「ギリシア・キリル文字圏」というのが、いまいちわかっていなかったが、
6月にアテネに行って、
アルファベットに似ているのに全然文字を読めないのに困惑しました・・
上記図解によれば、ギリシア・ラテン文字世界と、
いったん、まとめられているが、
最終的に
ラテン文字圏(西欧キリスト教圏)と
ギリシア・キリル文字圏(東欧正教圏)に二分されている・・
アテネに行く前にイスタンブールにいたわけだが、
そちらは、アラビア文字圏(イスラム圏)で
最初から解読はあきらめているからよい(?)のだが、アテネでは、

つい解読しようとしてしまうのが困りもの表記であったのだ。www

著者は、オスマントルコがご専門。イスタンブールの旅の流れで、借りました。
2020年07月刊で、開巻には、
「まったく想定外の危機が地球を襲った」、
新型コロナ・ウィルスのパンデミック化、風雲急な二十一世紀の始まり・・・っと。

~~~プロローグ~~~

プロローグ 文明が成熟するために

(コロナウィルスは)21世紀中二十一世紀中葉からの覇権国家の最有力候補のの中華人民共和国から発したとされ、
二十世紀後半以来、人類文明の最先端たることを誇った米国の文明も、
(最多の感染者と死者を出して)想定外の事態には驚くほど無防備であることが露呈した。(p3)
グローバリゼーションが急速に発展したのは良いが、パンデミックが短期間に全世界を巻き込むことになった。
守りには意外に弱くもろい。
前進のみを目指す文明でなく、
前進から生じるマイナスに対してのフィードバックのシステムを構築すべき。(p4)

「民主主義」(デモスラティア)は、デモス(民衆)によるクラティア(支配)を意味するギリシア語。
つまり、「民主政体」(三つの基本政体の一つ、ほかは「王政」と「貴族政」)
「王政」の変種は「僭主」(一人が支配)
「貴族政」の変種は「寡頭政」(限られた人々の支配)
「民主政」は堕落すると「衆愚政治」になる。
王政政体の指導者は、しばしば狂信者となる。(例 ヒットラー)
貴族政体は、自分たちの利害にしがみつく悪政となる(公算が大きい)。(例 村のボス政治)

(それに比べ)「みんなで支配する」デモクラシーは、現代において最良とされる。(p6)

(しかし)「ポピュリズム」と呼ばれる動きが、デモクラシーが持っていたフィードバック機能が働きにくくなっている。(P7) 

 

格差と差別と―資本主義の暴走
文明成熟のためのキーワード

現今の文明は第一段階。第二段階に移行するためのキーワードに「フィードバック」を提唱したい。(p12)

グローバリゼーションと文化
「文化変容」グローバリゼーションの進展で、唯一のグローバル・システムに統合されつつあるかに見える地球上にはなお、
文化を異にする複数の文化圏が併存し、それが国際環境にまで影響を与える。
(例 2016年「イスラム国」の出現)
人類史上、多年にわたって育まれてきた「文化」の違いが、大問題となる。(p15)

 

~~~目次読書~~~

第一章 文明と文化とは
別のものとみる
人間の営みとしての「文明」
=人間の、外の世界についての利用・制御・開発の能力とその諸成果の総体、また
人間の内的世界の制御・開発の能力とその諸成果の総体、
(それらの)諸結果についてのフィードバック能力の総体

文化:人間活動の「くせ」
=人間が集団の成員として後天的に習得し共有する、行動のしかた、
ものの考え方、ものの感じ方の「くせ」とその所産の総体

第二章 言葉と文字

人類の文明と文化にとって、言語は決定的な意味を有していた。(p17)
いかなる形で五大文字圏を形成するに至ったか。

第三章 知の体系の分化―宗教と科学と

文化の最重要分野の一つとしての宗教と、文明の最重要分野の一つとしての科学の誕生と両者の相克

第四章 文明としての組織 文化としての組織

ソフトの文明の最重要要素としての組織と、文化の関わり

第五章 衣食住の比較文化

歴史上。台文化圏を形成した諸文化の特色と、その変容過程を
衣食住のような身近な生活文化から解き明かす。

第六章 グローバリゼーションと文化変容
文学や技術とグローバリゼーションの関係

第七章 文明と文化の興亡―文明の生き残る道
文明と文化の発展と衰退の条件を概観

エピローグ 現代文明と日本

 人類の歴史、現代世界における、わが日本の文明と文化について振り返る

~~~以上目次読書~~~

~~摘み読み~~~

個別文明の興亡
太古以来の文字を保つ大文字文明として今日、生命を保っているのは、漢字文明のみである。(p201)

第一次世界大戦の前後に崩壊した古風な四つの帝国のうち
オスマン、ハプスブルク、ロシアと違い、旧体制下の版図をほぼ保全し「一治」を実現したのは中国のみ。
閉鎖空間の中で育まれた凝集力と同化力の固定型文明。
存続は、内的な凝集力とそれを実現しうる文化的同化力の強さが決定的に重要。(p209)

「中央ユーラシア」開放空間で生まれ、圧倒的な機動力と瞬発力を持つモンゴル人も、文化的凝集力と同化力においては、欠けるところがあった。(p213)
「アレクサンダー東征」に欠けていた核(凝集力)
ギリシア人からバルバロイ(異民族)視されていたマケドニアの王、

アレクサンダー東征の成功は文明力・文化力より、軍団の機動力・瞬発力による。(p216)
「アラブの大征服」(七世紀中葉~八世紀中葉)は、
成立後一世紀半もたたないうちに分裂消滅した「アレクサンダーの東征」とも「モンゴルの大征服」の結果と様相を異にする。(p218) 
アラビア文字世界としてのイスラム世界は、多様きわまる地理的環境・生態的環境を囲い込み、
「旧世界」の他の四つすべての文字世界に接する開放空間を形成した。
多言語、他民族の世界であるにもかかわらず、
ウラマー即ち「学者」の存在を通じで、強力な文化的凝集力を今日まで保つ。(p219)
この点、漢字世界では、言語的にも同化力が強力に作用した。
周辺諸社会は文化・文明語として、漢文、漢字、漢語語彙を共有したが母語を保った。


開放空間型環境の中で、空間拡張型の個別文明として発展拡大してきた、アラビア文字世界としてのイスラム世界の、内的凝集力と同化力は、
閉鎖空間内で空間固定型の個別文明を育できた中国(漢字世界の中心)や
インド(梵字世界の淵源)に比べると、
新環境における凝集力にやや劣るところがあった。(p220)

その結果はイスラム圏の諸社会における混乱にも現れている。

 

「インペリウㇺ・ロマヌム」
現代の唯一のグローバル・システムとしての近代世界体系形成の原動力となった
ラテン文字世界としての西欧キリスト教世界。

ローマ人の同化力は、先住民文化を徹底的に破壊しながら浸透していく。
ローマ帝国は、著しく文化的多元社会化し、多言語・多文字化した。
アイディンティティ―と統合の基盤を、法的概念「ロ―マ市民」たることに置こうとした。(p224)
東ローマ帝国が、ビザンツ帝国となった後は
ラテン文字世界から、ギリシア・キリル文字世界となっていったところからも、文化的同化力にかなりの限界があった。

拡張する西欧世界
「十字軍」、「レコンキスタ」、「大航海」
西欧人到来以前の伝統的文化が根本的に破壊されたのは、
伝統的文化を支える文明の水準で圧倒的劣位にあった南北アメリカ大陸を中心とする地域にとどまった。(p227)

拡大する東欧正教世界
ギリシア・キリル文字世界としての東欧正教世界の中心化したモスクワ大公国・・
その後のロシア帝国時代で、イスラムもアラビア文字も許容された・・・
ソ連邦では、キリル文字化されたが、崩壊後、キリル文字は廃されつつある。(ラテン文字に代わる)(p228)
 
宗教から民族へ
十八世紀からナショナリズムが影響を拡げ、ラテン文字世界としての西欧世界の亀裂が拡がる(p229)

宗教的な同化力と凝集力は強かったものの言語的同化は進んでいなかった西欧圏で、

言語に戻づく民族が対立の基軸として現れた。(p230)
統合の基盤は宗教から言語に戻づく民族へ。
民族国家としての国民国家が並立している西欧圏では、二次にわたる世界大戦を経験することになった。
アイディンティティと統合の基軸はまだ未成熟。

個別文明の反映と多様性―アメリカの場合
近年、ある社会の発展のために、ダイヴァーシティすなわち多様性が大切だと強調される。(p230)
アメリカ合衆国の標語は、かっては「多様性の中の統一」であった。(p231)
「人種のるつぼ」→「人種のサラダボウル」
原初のアメリカ社会は、ほとんどもっぱらWASPから成る同一性の強い社会であった。
社会的差別は残りながらも、法的差別は解消されていることもあり、米国に多様性社会の外見を与えている。
アメリカ的文化の同化力には限界がある。

多様性の社会というものは、文化的に異なるバック・グラウンドを持つ人々が、
各々の特色を生かして、イノヴェーションを生み出しうるかもしれない。
しかしそのような社会が内的凝集力を保つことはなかなかに困難。
異文化共存の困難さ

米国、EUは統合のコストを抱える。
その中で中国が「一帯一路」と称して、空間拡張的行動をとり始めている。
未來の世界秩序、個別文明間の比較優位の変遷はいかなる形をとるのであろうか。(p237)

文明発展のためのイノヴェーション能力
日本の場合、外発的イノヴェーションを出発点とするが、その「改善」型イノヴェーションにおいては、特段の能力を発揮した。
もはや自らの内発的かつ創造的なイノヴェーションの先端に立っていしかるべき立場に至った今日、とまどっているかにみえる。(p241)

イノベーションがどうして出現するか、それは自然的ないしは人的環境とその変化への適応が大きいのではあるまいか。(p242)
日本は一時は「西洋化」による「近代化」をいち早く進めたことによって、
中国をしのいだとはいえ、日本は漢字文化圏の周辺文化圏といえる。(p245)
とはいえ、近代西欧モデルの受容による「西洋化」としての「近代化」を、
非西欧諸世界のどの国よりも迅速に遂行したにもかかわらず、
日本独自の伝統文化の多くを保つことに成功したのも事実である。
少なくとも文化の領域においては、決して悲観するには当たらない。
今後は消極的受容から積極的発信の姿勢を打ち出していくべき。
そのことは、科学技術、経営組織についてもいえる。
ルーティン型「秀才」だけでなく、を作り出していくことが必要。
「異才」も拾い上げる「人材観」と「人材養成システム」

フィードバックとイノヴェーション
漠然とした前提を捨てて人間の「文明」と「文化」について、徹底的に考えをめぐらす時に来ている。(p252)

~~~~~(以上摘読)~~~~~~~~

 

講談社の内容紹介はこちら

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・科挙はなぜ中国社会内部の凝集力を高めたのか?
・日本は長子相続、イスラム世界では?
・箸、フォークとナイフ、右手指食、なぜ違う?
・洋装はいかに非西欧世界に受容されたか?
・なぜ音楽は国境、民族を越えるようになったのか?
・古代ローマと現代アメリカの同化力の限界とは?
・「異才」を育てるための条件とは?
・モンゴル帝国などの開放空間型集団が瓦解した理由
・文明成熟のためのキーワード「フィードバック」とは?

楽しみながら世界史のツボがわかる!

おまけ
この夏休みも、
月曜日に、開館8周年の漢字ミュージアムにサポート業務に行っています‥