興味シンシン

興味津津または深深なnekoatama’s blog

15世紀中世美術

ローアンの大時祷書

Grandes Heures de Rohan - BNF, Lat. 9471

15th-century painters - Lament over the Dead Christ - WGA15884
 15th-century painters - Lament over the Dead Christ


1430年頃、アンジュー公の宮廷のあったロワール地方のアンジェで描かれた写本挿絵、
写本の紙面を目いっぱい使った大胆な構成と息苦しいほどのドラマ性
中世美術の到達点ともいうべき、きわめてきれいな写本挿絵

パリ―中世の美と出会う旅 (とんぼの本)

昨日のこの本の続き(巻末)である。

 

nekomegami.hatenablog.com

 

 

1430年頃といえばイタリアでルネサンスが展開しつつあった。
しかし同時に15世紀を通じ、パリを中心としたフランスの中世美術も、様々な個性の輝きにより、イタリア・ルネサンスと拮抗するような優れた作品を生み出していた。

しかしフランスの中世美術は16世紀を迎えると突然姿を消した。

本質的に宗教美術だった中世美術に決定的に終わりを告げたのは宗教改革だった。
西洋世界がカトリックプロテスタントに分かれると、西洋がキリスト教を基盤とした一つの世界をなすという信念に、深い亀裂が生まれた。
美術そのものも根本から問い直される。

聖なるイメージとして信仰の拠り所であったものが、実はキリスト教で本来制作と礼拝の禁じられていた「偶像」に他ならないことが、宗教改革によって明るみに出される。

歴史は過ぎ去って消えてしまうわけではない。中世がヨーロッパにもたらした経験は地層のように堆積し、現代世界の欠くことのできない部分を作っている。
深く豊か記憶の古層におりりゆき、中世美術と向かいあい、その声に何度も耳を傾けてみたい。(結語)